松平の菩提寺である大樹寺(だいじゅうじ)は本堂のうらに、たの字にむっつのまがある大方丈(おおほうじょう)があって、きたがわのみっつのまのうちまんなかのまとにしのまが、それぞれ将軍がやすむ上段のまと将軍に接見する大名がひかえる下段のまになっとる。
上段の間
(円融天皇子日御遊之図)
(えんゆうてんのうねのひのおんあそびず)
1857年9月完成
ふすま絵、障壁画|国重要文化財将軍がお休みになる最も重要な部屋。
ふすまには円融天皇(969~984)一行が牛車をひき、若菜を摘んで遊宴する、正月の最初の子の日に長寿を願う「春」を題材にした様子が描かれとる。
円融天皇は将軍着座位置の背后の床壁に、枝に上半身を隠された様子で描かれとる(尊顔を描くのが恐れ多いと感じたためと思われる)。
下段の間
1857年9月完成
ふすま絵|国重要文化財将軍に接見するための控えの間。
三条実房(さんじょうさねふさ/平安時代末期から鎌倉時代前期にかけての公卿、歌人。朝廷の最高機関太政官の職、左大臣)一行がキノコ狩りに行く様子が描かれとる。
草1本までもおろそかにせん精密な筆遣いと大和絵特有の美しい彩色はそのままに、広々とした風景を表しとる。
将軍の間には「春」が描かれとるのに対し、下段の間には「秋」が描かれとるのも興味深い。
〔2023年2月28日訪問〕