猿投駅開通の祝辞 - 挙母駅開業100年展

2021.1.14 (92) 猿投駅開通の祝辞(1924年10月) 2220-1770
猿投駅開通の祝辞(1924年10月)
猿投駅のある「井上町」は、この地域を開墾した井上徳三郎のなまえに由来します。徳三郎は祝辞をつぎのようにむすんでおります。
「鉄道の開通により、駅頭の乗客やにもつのいきかいがひいちにちとにぎやかになり、人家がふえ、地方産物の一大市場ができることは想像にかたくないことです。えきの開業は、交通の利便と農村振興の一助となることをしんじてうたがいません」

2021.1.14 (93) 猿投駅開通の祝辞(1924年10月) - 文面 2890-2300

祝辞

  • 徂キニ三河鉄道延長ノ議アルヤ私カニ此挙ヲ賛シ吾人ノ所有地タル当村大字四郷字東山ノ耕地整理区域内数千坪ヲ率先提供シ当停車場ノ敷地ニ充テ佗ノ有志ト倶ニ亶ラ田園ノ文化ト産業ノ発展ニ資セリ爾来年ヲ越ヘ其工全ク成リ茲ニ本日ノ佳辰ヲトシ猿投駅開通ノ式ヲ挙ケラルルニ丁リ一片ノ所懐ヲ述フルハ詢ニ吾人ノ欽快措ク能ワサルトコロトス
  • 惟フニ農村ニ於ケル物資ノ運輸配給ノ途一ニシテ足ラスト雖モ交通機関ノ設備ヨリ急ナルハナシ矧ンヤ又爰地農学校ノ設ケアリテ其業ノ善導教化ノ淵叢ヲ以テ目睹スルモノアルニ至リテハ地ノ利是ヨリ大ナルハナシトス
  • 翻テ西参北部ノ地近邇著ルシク蚕業発展ノ気運ニ際シ桑園ノ増殖忽諸ニ付スヘカラサルモノアリ又猿投山脈ノ一帯石材陶土ノ及諸種原料無尽蔵ナルモノアリ搗テ加へて付近ノ林野未墾ノ面積実ニ数百町歩ヲ算スルヲ以テ此交通機関カ与ヘタル直接受クベキ土地ノ利用トシテハ或ハ農耕地域ニ又ハ混業地域ニ若クハ住宅地域ニ所謂田園都市ヲ建設スヘキ指命ノ到レルモノト言ハサルヘケンヤ希クハ吾人不敏ナリト雖モ郷党諸士ト倶ニ提携シテ之レカ施設経営ニ砕励シ地方ノ文化ニ産業ノ進展ニ林野ノ開拓ニ渾身ノ努力ヲ払ヒ以テ地方ノ福利増進ヲ籌ラントス
  • 更ニ又此駅頭ニ於ケル乗客ノ呑吐ニ荷物ノ聚散ニ日一日ニ殷賑ヲ加ヘ軈テハ此圏域人家ヲ以テ集団シ地方産物ノ一大市場ヲ出現センコトハ蓋シ想像ニ難カラストス依之衆庶漸ク利用厚生ノ緒ニ就キ交通ノ利便ト相俟テ農村振興ノ一助トナルヲ信シテ疑ハサルナリ
  • 聊カ蕪言ヲ叙シテ祝辞トナス

1924年10月31日

猿投村四郷井上農場主
井上徳三郎

豊田市近代の産業とくらし発見館〕
〔2021年1月じゅうよっか訪問〕